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MILK&honey
第5章 名前、呼んだら駄目?

「るりちゃん……」
高校の時、巧のお母さんが亡くなったと聞いた憶えが有る。
ということは、るりちゃんもお母さんを亡くしているという事だ。しかも、小学生くらいの時に。
「……うー……」
るりちゃんが小さく呻いた。
るりちゃんは二人兄妹だと、るりちゃんに会った後に巧に聞いた。巧が家を出ているんだから、今は、るりちゃんと、お父さんと、義理の母親の三人暮らしなんだろう。義理の母親は、かなり強烈な人らしい。制服を汚してしまったるりちゃんが、帰りたくなくても、不思議じゃ無い。
その制服のブラウスに、飛び散った卵も。
学校でつけられたんだとしたら、学校でだって気を抜けない状況なのかもしれない。姫ちゃんは、友達みたいだけど……もしかしたら、今はクラスが違うとか?
家でも、学校でも、つらいって言えなかったのかもしれねーな。
「……よしよし。」
「……うっ……」
我慢してたらしいのがいじらしくて、近寄って頭を撫でてみたら、嫌がられなかった。
頭を撫でついでに抱き寄せて、顔を肩の上に伏せさせる。こういう時、背が高かったら胸に抱いたり出来んだろーね。
「……大丈夫だから、いっぱい泣きな」
「……うっ……うー……」
震える肩を、ゆっくりとんとん叩く。
るりちゃんが、俺に素直に体を預けて、泣いている。
……もしかして、チャンス?
いやいや。
こんな時に付け込むなんて、駄目だろ。
……駄目なんだけど、付け込みたい。そうでもしなけりゃ、るりちゃんと仲良くなれる日なんて来ない。
「……るりちゃん?」
「……ひかる……さん……」
しばらく迷って、名前を呼んだら、るりちゃんは顔を上げた。
目が潤んで、きらきらしている。
……可愛い。いつも可愛いけど、すんげー可愛い。
見てたら、またぽろっと涙がほっぺに溢れたから、親指で拭ってやる。ほっぺたがりんごみたいに赤くて、熱い。
……キスしたい。
さくらんぼ色の唇に、涙を拭った親指で触れると、物言いたげに緩やかに開かれて、吐息が漏れた。

