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MILK&honey
第5章 名前、呼んだら駄目?

落ち着こう、俺。とにかく、落ち着こう。
るりちゃんに、なんか飲み物でも作ろう。
「ああ……それ、高校のジャージだからねー。巧も着てたでしょ?」
そう。るりちゃんに貸したのは、俺達の高校のジャージだ。多分巧も朔もとっくに捨ててる様なヤツだ。カマキリの様な、緑色のジャージ……生徒からはカマジャーと呼ばれて、忌み嫌われていた。
「ミルクティー、飲む?甘いの平気?」
「ありがとうございます」
そんな忌まわしい服に着替えたって、るりちゃんはカマジャーなんかに負けないくらい美しい。
「はい、どうぞ。」
差し出したのは、濃縮の紅茶を牛乳で薄めただけの手抜きミルクティーなんだけど。
るりちゃんは一口飲んで、ほっと息を吐いた。
「……すごく、おいしい……」
「良かった。巧も好きだから、るりちゃんも好きかなって」
「……お母さん……」
「えっ」
俺、お母さんかよ。
お兄さんですらねー、お母さんになっちまったのか。
お母さんと思われてるんじゃ、手なんか出せねー。出しても無駄だ、「お母さん」なら。
面倒見良すぎんのも、考えもんだな……
……と、思ったら。
「お母さん」には、続きが有った。
「これ……お母さんが作ってくれたのと、似てる……」
そう言うと、るりちゃんはぽろっと涙を零した。

