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MILK&honey
第24章 ずっと君を見ていたい
「えっ、えっ、ほんとに!?ほんとに、良いんですか?」
「はあ……」
はっきりしねー俺に、娘さんの声のトーンが落ちる。
「あのう……お探しなのって、『卒業式の薔薇』ですよね……?」
「ええ、まあ……」
「いやー、お目が高い!!このバラは幸せもんだね!貰ったお方もきっと喜びますよ!!」
「……ええ……」
「お父さんっ!!」
嬉々として薔薇を箱に収める、オヤジさん。
うん。
確かに、喜ぶとは思う。すげー可愛いもんな、これ。
……でも。
俺が今るりちゃんに貰って欲しい薔薇は、こーゆー薔薇じゃねんだよな……。
「あすこの生徒さんに差し上げるんなら、特大のお嬢様っぽいリボン付けときますね!で、これが、品種名とか育て方の説明とかです」
「あ、はい」
鉢植えとは別に袋に入れて渡された紙束を受け取る俺に、娘さんはもはや言葉も無く、申し訳無さそうな目を向けて来る。
や、良んです。なんなら自分のにしますから……って家空けがちな人間に育てられんのかよ、薔薇なんて繊細そうな花がよ!!
仕方ねー。最悪、橋本さんにプレゼントしよう。
誤解されねー様に、ちゃんと説明してからあげねーと……感激の余り何されっか、分かんねーや。
「はい!お買い上げ誠にありがとうございます!」
「や、ども……」
「申し訳、有りません……」
かなりまけてくれたんじゃねーかって、お代を払い。
娘さんに謝られながら、オヤジさんから明らかに箱本体よりリボンのがデカい、ちんまりした包みを受け取る。
「いやー、お兄さん、いい男だね!惚れちゃうね!俺が女なら、放っとかないね!」
「……そりゃ、どうも……」
女だったら、放っとかねーのか……
んじゃもしかして、るりちゃんも?
……ごめん。ねーな。絶対ねーよ。
この薔薇にゃあ悪いけど、今これをるりちゃんに見られんなぁ心の底から決まり悪い。
自分の気の利かなさ加減が、ひたすら惨めで、情けねー。
店の外に出てから鞄の中を整理して隙間を作ると、薔薇の箱が絶対に潰れねぇ様に、出来た隙間にそーっと仕舞った。