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MILK&honey
第7章 遠慮しないで、ウチにおいで

*
二人だけの内覧会の経緯は、こうだった。
「あのさ。るりちゃん、巧んとこがダメなら、ウチに来ない?」
「えっ」
「っ!?ふざけんなこの猿!!」
突拍子も無い俺の言葉に、るりちゃんはびっくり目になって、巧は俺に詰め寄った。
「お前、何言ってんだ?馬鹿か?!馬鹿だな!!」
……どうどうどう。
落ち着いて下さい、お兄さん。
口から出た適当極まりない提案に、理由をくっつけるべく高速で頭が働き始めた。こういう時が、一番生きてるって感じがするな。天性の嘘吐きなんだな。歌より嘘に向いてんな、俺。
「……巧。」
ゆっくり低く小さい声で名前を呼ぶ。
大声でいきり立っている人間には、逆のことをするのが一番届く。
「何だ猿!」
「俺は、この前まで、るりちゃんを見たことが、無かった。」
「はぁ?」
よし。
はぁ?って言わせたら、後はこっちのもんですよっと。
「るりちゃんさー。ここに来たこと、ほとんどねーんじゃね?」
「……うん。」
程良いタイミングで、るりちゃんが頷く。打ち合わせもしてないのに素晴らしいぞ、るりちゃん!……俺達気が合うね!
「なのに、この一週間で二度も来たんだろ?我慢の限界って事なんじゃねぇの?」
「っ!」
「……ん。」
るりちゃんが、頷いた。
目から涙がぽろっと落ちる。頭、撫でたい……けど、我慢する。

