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MILK&honey
第10章 彼氏が居るので、困ります。
ざっと見た感じだと、いかにも怪しそうって奴は見当たらない。
「……大丈夫?」
「うん……ごめんなさいっ……」
るりちゃんは一回ぎゅっと抱き付いたあと、身を起こして少し離れた。
「今、そいつは?近くに居る?」
謝んなくて良いし、抱き付いたままでも良いのに。
そう思いながら聞くと、るりちゃんはこわごわと辺りを見回した。
「……見えるとこには、居ないみたい……」
「このまま帰るのも、危ないかな……とりあえず、しばらく時間潰すか。お腹、空いてるよな」
俺達はとりあえず、近くに有ったファーストフード店に入った。
*
「……じゃあ、そいつは一応知り合いなのか」
「うん……」
向かい合って座り注文した物を食べながら、るりちゃんに尋ねた。
入った店は、こだわりのファーストフード店だったらしかった。よくある店には無い様な珍しいメニューが多く、るりちゃんに相談しながら、もたもた注文を終えた。こんな所で、もたつく俺……大人失格な気がする。
「塾で、同じ講座を取ってる人で……新しく志望校別のコースに進んだら、『志望校同じなんだ!志望学科どこ?』って、話し掛けて来て……」
るりちゃんは紙に包まれたバーガーを、困った様に眺めては、少しずつ食べ進めている。
困り顔の理由は多分、ソースとかマヨネーズとか具材とかが多くて、食べにくいからだ。苦手なのか、注文の時タマネギを抜いて貰ってたから、俺のよりは崩壊はしてないかもしれない。俺のは紙袋の中で、ほとんどバラバラになっている。
「男の人、慣れてないから、うまく話せなくて……話し掛けないで欲しいのに、断れなくて……」
そうか。学校は、女の子ばっかりだからなー。そう言えば俺にも最初は、警戒心丸出しの猫みたいな態度だった。
今までは変な奴が湧いてくる事も少なかったかもしれないが、予備校は男も山ほど居るからなあ。
ビシッと断れる様になっといて貰わないと、今後も不安だ。
「るりちゃん。すっごい効果的な断り方、教えてあげようか」
「え?!そんなの、あるの?」
「……『彼氏が居るので、困ります。』」
聞きたい!と目を輝かせたるりちゃんに、重々しくそう告げた。