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MILK&honey
第10章 彼氏が居るので、困ります。
「これで安心してお家に帰れるなー。タクシー拾って、先にるりちゃんちに送るからねー」
「え?」
ぼーっとしてたるりちゃんが、はっとした。
「……かーさんちに、行かないの……?」
「今からウチに来たら、帰るのすげー遅くなるだろ?ここで一応飯食ったし、今日は巧が居ないから、泊まる訳にもいかないからなー」
「……そっか……ご飯、作りたかった……」
あああ……すげーがっかりしてる。
料理、上手だもんなー。
そういう学校行きたいとか言ってた気がするし、昨日のうちに買い物しといてくれたみてーだし……何作るか、ちゃんと考えてくれてたんだろうなー。
……健気すぎて、泣けて来そう。
「残念だよなー。俺も、楽しみにしてた」
「ほんとに?」
「ほんとほんと。……でも、今日はダメ」
「……」
ほんと、で嬉しそうにしたるりちゃんは、ダメ、で無言で眉を寄せて、むーっと唇を尖らせた。
……そういう顔は、止めなさいね?かーさん、ちゅってしたくなるから。
いろいろと危ないので、頭を撫でて誤魔化す。
「明日からしばらくは早めに帰れるから、またおいで?」
「……じゃあ、明日行っても良い?」
「もちろん!」
そーだね、早く来たいよね。食材が痛むからね……あ。
「うん、ちょうど良い!明日なら、巧も一緒に夕飯出来るよ!」
良かったね!と言うと、なぜかまたむーっとして見せた。……止めなさいって。本当にするぞ、ちゅー。
それから食べ終えて片付けて、店を出て、タクシーを拾った。
タクシーの中でるりちゃんは、俺にもたれて眠ってしまった。
……疲れたんだろうな。心配してたことが解決して、安心したのも有んだろう。
顔に被さった髪を除けてやって、さっきソースが付いていた頬っぺを撫でる。……ちゃんと綺麗になってるな、よしよし。
あんまり長く触ってるといろいろマズいから、上着を掛けるふりをして、ほんの短く肩をそっと抱いた。
このままどっか連れ込んだり自宅に戻っちゃったりしかねない俺なのに、疑いもせず天使のような寝顔で眠る、るりちゃん。
……せめて、お家になかなか着かなきゃいいのに。
そんなバカな事を、半分本気で思ってしまった。