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借金のカタに妻を差し出しました
第2章 妻を貸します
ダイニングテーブルは端に寄せられ、ダイニングチェアは二脚を残し運び出され、残った一脚は空いたスペースの中央に置かれた。

その間に客室係は、矢那の荷物と言って、衣装カバーが掛かったハンガーと、箱をクローゼットに収納した。

メイクの終えた瑞樹の姿は、目元に紅を加え、少し暗い照明のなかで目立つ夜のメイクがされていた。

しかし、ヘアスタイルは夜の顔に不似合いなポニーテールを赤いりぼんで作っていた。

矢那の依頼した作業が全て終わるのを確認した客室係は、出て行く時に、もう少しで矢那から電話がある事伝えて、再び部屋は2人だけになった。

和明は、メイクアップされた瑞樹を見て、かける言葉が無かった。今の瑞樹は全て矢那の為に居るのだから。

部屋の電話が鳴り、瑞樹がゆっくりと受話器を耳に当て、「はい、瑞樹です。」と答え、暫くして「はい、わかりました。」と、またゆっくりと受話器を置いた。

瑞樹は、うつむき、和明を見ないように要件を伝えた。

「和明さん、もうすぐ矢那さんが来られます。私だけがこの部屋に残るようにとの事です。」

和明は、瑞樹の手を取り自分に引き寄せ様とした。

瑞樹はとっさに手を振りほどき、後ずさりした。

「いや、最後にキスをしようとした、だけなんだけど。」

「ダメって言われてるでしょ。」

「いや、わかんないだろう。」

「私がどんな覚悟でここにいるか、判って下さい。」

瑞樹の、思いがけない言葉に和明は戸惑った。

「もし、ここでアナタにキスをされたら、私は一緒に出て行きます。」

瑞樹は厳しい視線を和明に向け、

「アナタにその覚悟があるなら、私にキスをして一緒に逃げて下さい。」

そう言って瑞樹は、和明を迎える様に手を拡げ、目をつぶった。

「そうか、じゃ、がんばって。」

と言い残し部屋を出て行った。

瑞樹は、がんばっての言葉に、何処にも持って行けない感情を覚えた。

しかし、矢那からの電話の要件はまだあった。

クローゼットから衣装と箱を取り出し、箱の中の手紙を取り出し、内容に従い用意を始めた。


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