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依存
第1章 お腹が空いた
疑われて当たり前だったと思う。
安物でネコのキャラクターの書いてあるヨレヨレのトレーナーを着た女の子が格好良いスーツを着た社長さんの娘だとか絶対に変だ。
それでも、お巡りさんが私の手を離す。
「この公園は最近は危ない連中が出るから、大事な娘さんなら近付かせない方が良いですよ。」
お巡りさんは知らない人にそう注意して立ち去った。
「さあ、車に乗りなさい。キョウコ…。」
その人が私を車に乗せようとする。
もしも、この人が人拐いだとしたら大変な事になると私の身体が強ばった。
「大丈夫…、お巡りさんが居なくなったら君をお家まで送ってあげるからね。」
小さな声でその人がそう言う。
信用するべきだろうか?
やはり逃げるべきだろうか?
悩む私の小さなお腹がギュルルルとはしたない音を出す。
「家に返す前にコンビニだな。」
その人が吹き出して笑い出す。
気付けば私はその人の車に乗っていた。
「名前は?」
「早苗…。」
「歳は?」
「8歳…。」
素直に答えてた。
その人は本当にコンビニに行き私に好きな物を買えと言ってくれる。
おにぎりを1つだけ選んだ。
「早苗はもっと食べなきゃいけないよ。」
そう言って私にオレンジジュースとサンドイッチを追加で買ってくれる。
おにぎりも3つ買ってくれた。
アパートの近くまで、その人の車が送ってくれる。
「もう、こんな時間に家を抜け出したりしちゃいけないよ。」
知らない人がそう言う。
でも…、お腹が空いてたから…。
それが言えなくて泣きそうになる。
「明日…、またあの公園で会おう。」
知らない人はそう言って私の前から立ち去った。