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熟女美紗  情交の遍歴
第6章 軋むベッド 情交の館 
 平凡な幸せ。繰り返される日常。辰夫との十年の結婚生活がついこの間のことのように思い出された。

 (夫婦・・・、妻の座って何だろう)

 辰夫が逝った後の生活は打って変わって波乱万丈。
 まさかこんなに何度も出会いや別れに遭遇するとは、夢にも思っていなかった。
 そして今、美紗は社長との情事にピリオドを打とうとしていた。

 「瀬川さん、待って下さい。ご一緒しませんか」

 背後からの声に、美紗は振り返った。
 そこには息を切らせて走ってきた前田が立っていた。
 美紗は驚いて立ち止まった。

 「どうなさったんですか」
 「あの二人には、これから込み入った話があるようで、わたしの居場所がないんです」
 「だって、貴方、奥様のお供でしょう」

 (いったい、久美の『若いツバメ』はどうしたのか、肝心の恋人をほったらかして)

 「瀬川さん、誤解しないで下さい。私は久美さんの『若いツバメ』なんかじゃありませんから」 

 健がニッコリ微笑んだ。

 「それにしても、こんなに朝早く・・・。昨夜は、お二人で横浜の夜を堪能したんでしょう」

 美紗は公園に向かって歩き出した。

 「また、それも誤解です。今朝京都を発ったんです。八時に京都を発てば新横浜には十時です」

 美紗は幸一の言葉を思い出した。
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