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熟女美紗  情交の遍歴
第7章  欲情の花火 医師 健 
 二人は健の運転で宮津に向かった。
 京都の山間部を抜ける100㌔1時間半のドライブ。
 車の中でも、健は饒舌だった。

 「覚えています・・・、あのタクシーの中で僕にキスしたこと」
 「エッ、何のこと・・・」
 「あの、泥酔した日のことですよ。僕は、美紗さんが、吉沢さんと僕を間違えたと思いました。でも、キスをしたあと『ケンチャン』って言ったんです」
 「ウソー」

 そんなはずは絶対ないと、美紗は思った。
 幸一との情交の日の翌日ではないか・・・。

 「ケンチャン、いったいあなたの話はどこからどこまでが本当で、どこから作り話なの・・。まじめに聞いて馬鹿を見たようね」
 「心外です。正直言って、僕だってビックリしました」

 ハンドルを握る健の顔は至って真剣そのもの、ウソをついているようには思えない。
 考えてみれば、こうして京都にいることがそもそも、あまりにも軽薄な行動ではないか。

 「軽蔑するでしょうね」
 「何を」
 「私を」
 「何を言ってるんですか美紗さん。軽蔑するなんてとんでもないです。美紗さんの生き方こそ、僕の理想」
 「そうね。ケンチャンには願ったり叶ったりの尻軽女ですものね」

 健は少しムッとした声でしゃべりだした。

 「美紗さん、仏の教えについて考えたことがありますか」
 「ないわ」
 「諸行無常」

 美紗は首を振った。

 「わたし、そういう四字熟語は苦手なの」
 「なるほど、簡単に言うと人の心は変わると言うことです」
 「そんなことは小学生でも知っていることよ」
 「そうです。その小学生でも知っていることを忘れて恋人たちは結婚します。その結果、婚姻と言う束縛が生まれる。跡形もなく消えた愛情と微動だにしない法的婚姻関係のハザマで苦しむことになるんです。僕は結婚にとらわれない美紗さんのような生き方こそ新しい生き方だって・・・」
 「あら、私は既婚者よ。たまたま夫に先立たれて一人になっただけ」
 「ということは、未亡人・・」

 健は少しあわてた。
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