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第7章 　欲情の花火　医師　健　

　「幸せな結婚生活だったわ。見込み違いだったようね」

　健にとって美紗の話は意外だった。
　考え込むように健は再び美紗に質問した。

　「お子さんは」
　「出来なかったの。私、ホルモンバランスが悪くて」
　「治療すれば治ることも・・・」　
　「したわ。でも、薬の副作用が強くて諦めたの」

　健は「なるほど」と言って不妊の話を打ち切った。

　「悲しかったわ。夫の突然の死がどれほど悲しいか、ケンチャンに分かるかしら」
　「もちろん、無理です。でも、僕なりに想像はできます。美紗さん、もしかしたら、この旅は仏様のお導きだったかも」

　健は急に声を落とした。

　「まさか、ご主人が亡くなられていたとは、予想外でした」
　「仏様のお導きってどういうこと」　
　「行けばわかります」

　天橋立に程近い文殊荘という日本情緒漂う宿にチェックイン。
　宿は静かな入り江に接するように建っていて、窓の外をのぞくとそこは静かな水面だった。

　（まずかったかな・・・、美紗さんは未亡人か）
　ツインを予約した健は燈篭流しを見た後の展開が心配だった。
　夕食を済ますと、二人は車なら五分もしない宮津の浜辺にのんびり歩きながら向かった。