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第1章 肉欲の暴走　大学生　俊輔

　束の間の同居生活は去り、美紗の生活はまた元に戻った。

　美紗は夫の納骨を機に、計画していた転居を実行した。
　一人暮らしには広過ぎる自宅を処分し、横浜駅に近いポートサイド地区のタワーマンションの一室を購入した。
　新しい住まいは、それまでの家の半分ほどの広さだった。
　夫のものはもちろん、家具や衣類もマンションに納まるよう「断捨離」した。
　夫との記念の写真やビデオのデータは小指の先ほどの小さなＳＤカードにすべて納まった。
　窓の外には新しい景色が広がっていた。
　林立するタワーマンション。
　その向うにミナト未来の高層ビル群が望めた。
　美紗は、なんともいえない新鮮さと身軽さを実感した。

　暮らしに出来た大きな空洞を埋めるものを探して、美紗はあれこれ試みた。
　その結果、美紗が見つけたのは山歩きだった。
　ジムで体を鍛え、休日に近郊の里山に登った。
　週三日の勤務は、そんな山歩きを楽しむ美紗に好都合だった。　
　たまに、学生時代の友人で、同じ会社に勤める絵里が付き合ってくれた。
　とはいえ、絵里は独身であれこれ忙しく、一緒に登るのは、たまたま予定が許すときだけ。
　そんなわけで、美紗はほとんど単独登山。だから、危険な山は避けた。

　そんな、ハイキングに毛の生えたような山登りにも危険が潜んでいた。