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第1章 肉欲の暴走　大学生　俊輔

　「あなたとの、あの日のことが僕の人生を変えました」

　俊輔は静に語りだした。

　「学生生活の中で、あの夜の体験が一番大きな出来事でした。今の僕があるのは、あの、あなたとの体験があったからです。あの日、僕は大人に脱皮したんでしょうね」

　美紗は俊輔の言葉を聞きながら、涙が溢れ出た。

　（よかった・・・）

　涙に気づいた俊輔はその涙を唇に受けて吸った。
　二人はただ抱き合って再び眠りに落ちた。


　翌朝、俊輔と哲司は美紗の車を取りに行ってくれた。
　それから、俊輔の運転で横浜に向かった。
　俊輔は渡米を前に、祖父に別れの挨拶に来ていたのだ。
　そのあと、俊輔は思い出したように充のことを話した。

　「子どもの頃、ミッちゃんが僕の父親代わりでした。だから、ミッちゃんと美紗さんが僕を大人にまで育ててくれたのかなあ」

　美紗は不思議な縁を感じた。
　
　一週間もすると、美紗はなんとか普通に歩けるようになった。
　一ヵ月後には、捻挫したことも忘れ、変わらない日常が戻っていた。
　そんなある日、玄関に俊輔が現れた。

　「すいません。もう一日延ばすと半月分の家賃がかかるので」

　俊輔はそう言って笑った。
　アメリカ赴任を前にアパートを引き払って美紗の家に転がり込んできたのだ。