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第4章 　囲炉裏部屋　はじめて知る拘束の悦び

　「それだけ欲しかったってことか」
　「ふふふ、そうよ」

　美紗は自虐的に笑った。

　「そういう女が俺は好きさ」
　「発情した女なら、自分の好きにできる」
　「まあね」
　「・・・・いいわよ」　

　その言葉に、充がニヤッと笑った。

　（いいわ。あなたの好きにして・・）

　美紗は心の中で呟いた。

　山は雨に霞み、木々は雨に濡れて静かに呼吸をしていた。
　降り続く雨に増水した谷川の水は轟々と音を立てて流れ、いつもの静けさはない。
　そんな山里の一軒家で一組の男女の狂おしい情交が始まろうとしていた。
　
　あの暑かった夏がウソのように、雨の山里の夜は冷えた。
　充は囲炉裏のある部屋に美紗を誘った。
　大黒柱や厚い床板は黒光りしてまるで鏡のようだ。
　囲炉裏には串焼きの岩魚が並び、吊るされた湯気の上がる鉄瓶には、銚子が二本燗をつけられている。
　部屋の隅には布団が敷かれて、その上に枕が無造作に二つ置いてある。