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熟女美紗  情交の遍歴
第5章  情事の香り 社長 幸一
 美紗は漕ぎ出した船の舵を大きく切った。
 次の厚木インターで東名を降り、Uターンして横浜に向かった。
 充への連絡はたった1本のメールで済ませた。
 『ごめんなさい。急用ができました』
 これが充との別れを告げる最後のメールになるとは、美紗はそのとき、思いもしなかった。

 幸一は何度もためらった後に電話を掛けた。
 断られれば、それまでだ。なかったことと思えばそれで済むこと・・・。
 ただ、あの人と食事でもできればそれでいい。

 その誘いに美紗が乗ったのだ。
 幸一は信じられない思いで電話を切った。
 
 昼少し前に自宅へ戻った美紗は軽い昼食を済ませ、のんびりとした午後を過ごした。
 夕暮れが迫るとシャワーを浴び、時間をかけてメイクをし、少しオシャレをしてから自宅を出た。
 チャイナドレスを思わせるようなタイトなワンピースの上にカシミアの黒いコートを羽織って歩く美紗を、すれ違う男たちが振り返った。
 ベイシュラトンホテルは横浜駅を挟んで反対側にあった。
 ゆっくり歩いても20分程度の距離を、美紗はハイヒールの音を響かせながら軽快に歩いた。
 ホテルに着くと、中央に吹き抜けのある広いロビーの向うから、美紗を見つけた吉沢がゆっくりと近づいて来た。

 「お待たせしました」

 美紗が会釈すると吉沢は握手を求めた。

 その手は今までずっと握り締めていたようにじっとりと汗ばんでいた。
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