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熟女美紗  情交の遍歴
第5章  情事の香り 社長 幸一
 「よく来てくれました」

 二八階のスカイラウンジ『ベイ・ビュー』に美紗を案内した。
 『ベイ・ビュー』に向かうエレベーターの中でも、穏やかな吉沢の背中を美紗は見つめていた。

 案内された『ベイ・ビュー』からはベイブリッジやランドマークの夜景が臨めた。
 ガラス窓の外に広がる夜景を見ながら、幸一は静に語り出した。
 
 「子どもが成長すると親との間に距離ができるように、夫婦の間にも距離が生まれます」

 美紗は頷いた。

 「最初はお互い相手に合わせようと努力しましたけどね。それがなかなか難しい」
 「奥様は何に・・」 
 「俳句です。最初はお手伝いで参加した会報作りが、今では彼女の双肩にかかって、忙殺される毎日のようです」

 会の拠点が京都にあるため、最初は月に一度の京都通いが、今では常駐。とうとう京都にマンションを購入し別居暮らし。

 「私も、詳しいことは知らないんですがね」

 幸一はそう断ってから、妻の京都での活躍を説明した。
 妻は俳句に、一方幸一はアウトドアにと、次第に二人の距離は広がっていったのだ・・・。

 (それにしても・・・・いつまでこんな話を)
 
 相手の話に頷きながら、女を口説くのに、家庭の話を持ち出す幸一が美紗には滑稽に思えた。
 言い訳がましく、話が遠回り過ぎるのだ。

 (早く肝心な話をすればいいのに)
 でも、それが幸一の誠実さの表れでもあるのだろう。
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