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フリマアプリの恋人
第7章 秋桜の秘密
「…あ…あの…」
たじろぐ澄佳を、その女性は一瞬驚いたように見つめ…やがてそっと…その形の良い口唇を開いた。
「…もしかして、柊司さんとお付き合いされているお方かしら…?」
…嫋やかな…上品な声だ…。
澄佳は小さく頷き…慌てて頭を下げた。
「…は、はい。
あの…私、小川澄佳と申します」
頭を下げた先に、その女性の誂えの良い風雅な夏の白い絽の着物が見えた。
…柊司が男性にしては着物の知識が豊富なことを思い出す…。
「…初めまして…。
清瀧由貴子と申します。
柊司さんの母です。
…柊司さんがいつもお世話になっております…」
美しいお辞儀だ。
すべての礼儀に適ったような優美な所作であった。
柊司の義母…由貴子からは静かに辺りを制するような品格のオーラとえも言われぬ床しい芳香を感じた。
…相反して、まるで自分がとても無作法で教養がない人間のように思えてしまい、澄佳は無意識に萎縮してしまう。
そんな澄佳に由貴子は静かに微笑いかける。
「…突然お伺いして、申し訳ありません。
近くまで来たものですから、柊司さんに少しお届け物を置いて帰るつもりでしたの…」
…そうして、手にした優雅な紫縮緬の風呂敷に包まれた重箱を澄佳に手渡した。
「…これを柊司さんにお渡しください。
葛餅ですの。
たくさん作りすぎてしまって…。
柊司さんの大好物なので、お届けしようと思ってまいりました。
どうぞよろしくお伝えください」
そのまま再び美しいお辞儀を見せ、暇乞いしようとする由貴子を慌てて引き留める。
「お待ちください…!
…あの…お上りください…。
お茶でも召し上がっていかれてください…。
…わ、私も…今、来たばかりなんです…。
なので、きちんとおもてなしできるか分かりませんが、ぜひ上がってください」
柊司の義母をそのまま帰す無礼をするわけにはいかない。
必死に不器用に言葉を繋ぐ澄佳をじっと見つめ…やがて由貴子はどこか謎めいた眼差しでふわりと微笑った。
「…ありがとうございます。
…では、お言葉に甘えて少しだけ…」
たじろぐ澄佳を、その女性は一瞬驚いたように見つめ…やがてそっと…その形の良い口唇を開いた。
「…もしかして、柊司さんとお付き合いされているお方かしら…?」
…嫋やかな…上品な声だ…。
澄佳は小さく頷き…慌てて頭を下げた。
「…は、はい。
あの…私、小川澄佳と申します」
頭を下げた先に、その女性の誂えの良い風雅な夏の白い絽の着物が見えた。
…柊司が男性にしては着物の知識が豊富なことを思い出す…。
「…初めまして…。
清瀧由貴子と申します。
柊司さんの母です。
…柊司さんがいつもお世話になっております…」
美しいお辞儀だ。
すべての礼儀に適ったような優美な所作であった。
柊司の義母…由貴子からは静かに辺りを制するような品格のオーラとえも言われぬ床しい芳香を感じた。
…相反して、まるで自分がとても無作法で教養がない人間のように思えてしまい、澄佳は無意識に萎縮してしまう。
そんな澄佳に由貴子は静かに微笑いかける。
「…突然お伺いして、申し訳ありません。
近くまで来たものですから、柊司さんに少しお届け物を置いて帰るつもりでしたの…」
…そうして、手にした優雅な紫縮緬の風呂敷に包まれた重箱を澄佳に手渡した。
「…これを柊司さんにお渡しください。
葛餅ですの。
たくさん作りすぎてしまって…。
柊司さんの大好物なので、お届けしようと思ってまいりました。
どうぞよろしくお伝えください」
そのまま再び美しいお辞儀を見せ、暇乞いしようとする由貴子を慌てて引き留める。
「お待ちください…!
…あの…お上りください…。
お茶でも召し上がっていかれてください…。
…わ、私も…今、来たばかりなんです…。
なので、きちんとおもてなしできるか分かりませんが、ぜひ上がってください」
柊司の義母をそのまま帰す無礼をするわけにはいかない。
必死に不器用に言葉を繋ぐ澄佳をじっと見つめ…やがて由貴子はどこか謎めいた眼差しでふわりと微笑った。
「…ありがとうございます。
…では、お言葉に甘えて少しだけ…」