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フリマアプリの恋人
第7章 秋桜の秘密
緊張しながら淹れたお茶を、由貴子は微笑んで褒めてくれた。
「…とても美味しいわ。ありがとうございます」
ほっと胸を撫で下ろす。
お茶菓子には持参した手作りのドライフルーツのケーキを添えた。
庭で採れたすぐりやブラックベリー、杏子をたくさん入れたケーキだ。

「…玉露には合わないかも知れませんが…。
お口汚しに…」
由貴子は品の良い所作で一口食べ、目を見張った。
「…美味しい…。
澄佳さんの手作りでいらっしゃいますの?」
「はい。…お口に合って良かったです…」

「…大変失礼ですけれど…澄佳さんのご職業は…?」
遠慮勝ちに尋ねる由貴子に澄佳は背筋を正して答える。
「はい。…小さな食堂を営んでおります」
由貴子が濃い睫毛を感心したように瞬いた。
「…まあ…そうなんですの…。やはり…。
どうりでお茶もケーキもとびきり美味しいはずだわ…。
プロフェッショナルなお味だもの」
絶賛されて恐縮したように肩を竦める。
「…そんな…。内房の小さな町の小さな食堂です。
プロだなんて…」
意外そうに由貴子が美しい眉を上げた。
「内房?東京ではないのですか?
…あの…。では、どうやって柊司さんとはお知り合いになられたのかしら?」
「…はい。あの…私、フリマアプリでハンドメイドのアクセサリーの出品をしておりまして…。
そのイヤリングを柊司さんが購入してくださったんです。
それがご縁で…」
…馴れ初めを勝手に話してしまって良いものか、少し迷った。
しかし柊司との出会いを澄佳はとても大切に…誇りにすら思っていた。
だから柊司の義母には正直に打ち明けたかったのだ。

一瞬の間があり、由貴子はああ…と合点がいったような表情をした。
「…イヤリング…。そう…。そうだったのですね…」

…それは微かに寂しげな色を帯びていて、澄佳の胸に僅かな引っ掛かりを残した。



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