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フリマアプリの恋人
第7章 秋桜の秘密
澄佳は厚かましいと思いつつも、思い切って尋ねてみた。
「…あの…。
柊司さんは、どんなお子様でいらっしゃいましたか?」
澄佳の知らない柊司を由貴子は知っている…。
それをぜひ、尋ねてみたかったのだ。

由貴子の美しい…どこか人形じみた優美な瞳が澄佳を捉え…ふっと柔らかな色を帯びた。
「…私が柊司さんに初めて会ったのは、柊司さんのお父様とのお見合いの席でした…。
柊司さんはお母様を幼い頃に亡くされていて…。
私の兄と柊司さんのお父様が大学の同窓生だったので、私を後添えにどうかと縁談が起こったのです。
…柊司さんは十二歳でしたわ…。
…柊司さんはとても緊張していらして…でも、お父様に恥をかかせないようにとても気を遣って…一生懸命、自分の父親の後妻になるかもしれない私に嫌われないように笑顔を作っていた…。
…そんな健気な男の子だったわ…。
お行儀が良くて、利発で、お優しくて…清々しいくらいに綺麗な男の子で…どこか寂しげで…脆そうに見えた…。
…けれどそれを見せないように、精一杯気を張っていて…」

…かつての柊司を思い出しているのだろうか…。
由貴子の美しい瞳が、艶めいて潤む…。
…女の澄佳ですら、どきりとするような色香に満ちた表情だった。

「…そんな柊司さんを見た時に強く思ったの。
この少年の母になりたい…と」
由貴子の瞳がきらりと光り、ゆっくりと澄佳を見つめた。
「…私は自宅に帰って見合い話を取り持った兄に伝えたの。
…柊司さんのお母様になりたいから、清瀧家にお嫁に行かせてください…と」
澄佳は息を呑んだ。

「…柊司さんのお母様になりたい…。
柊司さんを幸せにしたい…。
今まで、私の人生であんなにも強く願ったことはなかったわ…」

…これは、熱烈な愛の告白なのではないかと澄佳は静かな驚きの中、密かに思った…。


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