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フリマアプリの恋人
第7章 秋桜の秘密
ダイニングに入った柊司がテーブルに並べられた料理の数々を見て目を輝かせた。
…鰯や鯵、鮪、烏賊、甘海老、いくら、アボカド、錦糸卵などを色あざやかに散りばめたちらし寿司、茄子の煮浸し、きゅうりとわかめの酢の物、蛤のお吸い物…。
「こんなにたくさん作ってくれたの?
ありがとう。疲れたでしょう?」
「ううん。お料理は大好きだから…」
…カウンターキッチンに置かれたマンションのキーが目の端に入る。
覚悟を決めてキッチンに入る。
澄佳は冷蔵庫に入れた重箱を取り出し、柊司に差し出す。
「…今日ね、お義母様がいらしたの。
葛餅を作られたから柊司さんに…て」
「母様が?…そう…」
柊司が不意に表情を変えた。
…母様…と呼ぶのか…と、新たに知る小さな事実…。
やはり柊司さんは良いお育ちの方なのだという思いが、自分の劣等感を微かに刺激する。
「…義母の葛餅はとても美味しいんだ。
あとで一緒に食べよう」
普段と変わらぬ表情を見せ、にっこりと笑う。
…そしてほんの僅かな間ののち…。
「…義母は何か言っていた?」
…その表情に常ならぬ柊司の心情を感じ取ってしまう自分は、彼を本当に愛しているのだと切なく思う。
「…いいえ、特には…。
私とお茶を飲んでくださって…柊司さんの子どもの頃のお話しをしてくださって…。
…それからこれを…」
カウンターキッチンのキーケースからマンションの鍵を取り上げ、柊司に差し出した。
柊司の眼が見開かれ…受け取った鍵をじっと見つめた。
「…そう…。
母様がこれを…」
…見つめる眼差しは寂しさのような哀しさのような…そして例えようもない愛おしさのような複雑な色が混ざり合っていた。
澄佳の胸がずきりと痛んだ。
…鰯や鯵、鮪、烏賊、甘海老、いくら、アボカド、錦糸卵などを色あざやかに散りばめたちらし寿司、茄子の煮浸し、きゅうりとわかめの酢の物、蛤のお吸い物…。
「こんなにたくさん作ってくれたの?
ありがとう。疲れたでしょう?」
「ううん。お料理は大好きだから…」
…カウンターキッチンに置かれたマンションのキーが目の端に入る。
覚悟を決めてキッチンに入る。
澄佳は冷蔵庫に入れた重箱を取り出し、柊司に差し出す。
「…今日ね、お義母様がいらしたの。
葛餅を作られたから柊司さんに…て」
「母様が?…そう…」
柊司が不意に表情を変えた。
…母様…と呼ぶのか…と、新たに知る小さな事実…。
やはり柊司さんは良いお育ちの方なのだという思いが、自分の劣等感を微かに刺激する。
「…義母の葛餅はとても美味しいんだ。
あとで一緒に食べよう」
普段と変わらぬ表情を見せ、にっこりと笑う。
…そしてほんの僅かな間ののち…。
「…義母は何か言っていた?」
…その表情に常ならぬ柊司の心情を感じ取ってしまう自分は、彼を本当に愛しているのだと切なく思う。
「…いいえ、特には…。
私とお茶を飲んでくださって…柊司さんの子どもの頃のお話しをしてくださって…。
…それからこれを…」
カウンターキッチンのキーケースからマンションの鍵を取り上げ、柊司に差し出した。
柊司の眼が見開かれ…受け取った鍵をじっと見つめた。
「…そう…。
母様がこれを…」
…見つめる眼差しは寂しさのような哀しさのような…そして例えようもない愛おしさのような複雑な色が混ざり合っていた。
澄佳の胸がずきりと痛んだ。