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フリマアプリの恋人
第7章 秋桜の秘密
小さな吐息とともに、優しい声が鼓膜に届く。
「…そう。それはおめでとうございます。
良かったわ…。
柊司さんは運命のひとに巡り会えたのね。
…今夜、お父様とお母様にご報告するわね。
柊司さんに素晴らしいお嫁様がいらっしゃいますよ…て。
…柊司さん。お幸せになってね」
「…母様…」
…口を開けば、別の言葉が溢れ落ちそうになる。
由貴子は今、どんな気持ちでいるのだろう。
…かつて、柊司と由貴子は想いを通わせ合い…堪え切れぬまま抱きしめ合ったこともあった。
その時に柊司の胸に滾ったものは明らかに母親への思慕ではなく、異性としての熱い恋愛感情であった。
由貴子もそうであったに違いない。
その切ない眼差しで、それは痛いほど伝わってきた。
…しかし、柊司は怖かったのだ。
亡くなったとはいえ父親を裏切り、親子の禁忌を侵すことを…。
だからその禁断の垣根を乗り越えることは、できなかったのだ。
…由貴子の自分に寄せる密やかな想いを知りつつも…。
…自分は卑怯だ…。
柊司は唇を噛み締める。
…けれど、今や由貴子にしてやれることは何もないのだ。
澄佳を愛してしまった自分には、もう為すすべがないのだ。
…だから、こんな風に全てに気づかぬふりをして、語りかけることしかできないのだ。
「…ありがとうございます。母様。
母様に祝福していただけることが一番嬉しいです」
…それが、何より由貴子を傷つけることを知りつつも…。
「…そう。それはおめでとうございます。
良かったわ…。
柊司さんは運命のひとに巡り会えたのね。
…今夜、お父様とお母様にご報告するわね。
柊司さんに素晴らしいお嫁様がいらっしゃいますよ…て。
…柊司さん。お幸せになってね」
「…母様…」
…口を開けば、別の言葉が溢れ落ちそうになる。
由貴子は今、どんな気持ちでいるのだろう。
…かつて、柊司と由貴子は想いを通わせ合い…堪え切れぬまま抱きしめ合ったこともあった。
その時に柊司の胸に滾ったものは明らかに母親への思慕ではなく、異性としての熱い恋愛感情であった。
由貴子もそうであったに違いない。
その切ない眼差しで、それは痛いほど伝わってきた。
…しかし、柊司は怖かったのだ。
亡くなったとはいえ父親を裏切り、親子の禁忌を侵すことを…。
だからその禁断の垣根を乗り越えることは、できなかったのだ。
…由貴子の自分に寄せる密やかな想いを知りつつも…。
…自分は卑怯だ…。
柊司は唇を噛み締める。
…けれど、今や由貴子にしてやれることは何もないのだ。
澄佳を愛してしまった自分には、もう為すすべがないのだ。
…だから、こんな風に全てに気づかぬふりをして、語りかけることしかできないのだ。
「…ありがとうございます。母様。
母様に祝福していただけることが一番嬉しいです」
…それが、何より由貴子を傷つけることを知りつつも…。