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第7章 秋桜の秘密

「…片岡さん…どうして…」
五年前に別れた恋人…片岡直人…そのひとが澄佳の前にまるで有り得ない魔法のように現れたのだ。

「…元気そうだね。
良かった…」
…相変わらず、綺麗だ…。
そう呟いて懐かしそうに澄佳をじっと見つめ、目の前で立ち止まった。

…片岡は上質ではあるが五年前よりずっと地味とも言える色合いのスーツに身を包んでいた。
その表情はかつての鋭くギラギラとした勢いは削ぎ落とされ、穏健な色合いのものに取って変わられていた。
どことなく哀愁めいた寂しげな雰囲気は、あの頃には微塵もなかったものだ。
…けれど、その怜悧な眼差しや声…そして彼が愛用していたフレグランスはあの頃のままだ。

「…どうして…？」
…今頃…何をしにきたの…と震えるか細い声で尋ねる。
片岡の端正な眼差しが、澄佳をひたりと捉えた。

「…君に会いに来た…」