この作品は18歳未満閲覧禁止です
![](/image/skin/separater43.gif)
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
フリマアプリの恋人
第7章 秋桜の秘密
![](/image/mobi/1px_nocolor.gif)
「…澄佳…」
澄佳がゆっくりと片岡を見上げた。
流れ落ちる涙を拭おうともしなかった。
黒曜石のようにしっとりと輝く瞳は、夢のように美しかった。
「…ごめんなさい。片岡さん。
でも…私たちの恋は…五年前に終わっていたのよ。
貴方が私に背中を向けた…あの日に…」
…あの日、澄佳の心に背を向け、部屋を出て行った片岡…。
…「君は俺には重すぎる…」
そう冷ややかに言い放った。
あの瞬間に、片岡は澄佳と二人の恋を手放したのだ。
片岡が苦しげに眉を顰め、口を開く。
「…手紙を読んだか?」
澄佳が長い睫毛を瞬く。
「…え…?」
「宮緒に託した手紙だ。
…読んでくれたか?」
遠い記憶を手繰り寄せる。
…東京から引っ越したあの日…。
宮緒が一通の手紙を澄佳に渡した。
…けれど…。
「…いいえ。読まなかったわ」
読まずに破り捨て、内房の海に捨てた…。
未練を残したくなかったからだ。
「…そうか…」
片岡は小さくため息を吐いた。
「…手紙に…俺はこう書いた。
俺は君が怖かった。
誰よりも愛していたが、怖かった。
何年経っても穢れることがない君に…畏れを抱いていた。
…君が一途に俺に尽くしてくれればくれるほど、怖かったんだ。
だからわざと、ほかの女と浮気した。
君が俺に愛想を尽かせば、いいとすら思っていた。
けれど自分からは、君を手放したくはなかった。
だから距離を置こうとしたんだ。
…妻が君を殺めようとして…俺はもう君の元には戻れないと思った。
すべては俺が元凶だからだ。
妻に付き添うことが、妻と君への償いだと…。
…けれどもし、君が今も俺を愛してくれているのなら、待っていてほしいと…。
何年かかるか分からないが、待っていてほしいと…。
そう書いたんだ」
澄佳がゆっくりと片岡を見上げた。
流れ落ちる涙を拭おうともしなかった。
黒曜石のようにしっとりと輝く瞳は、夢のように美しかった。
「…ごめんなさい。片岡さん。
でも…私たちの恋は…五年前に終わっていたのよ。
貴方が私に背中を向けた…あの日に…」
…あの日、澄佳の心に背を向け、部屋を出て行った片岡…。
…「君は俺には重すぎる…」
そう冷ややかに言い放った。
あの瞬間に、片岡は澄佳と二人の恋を手放したのだ。
片岡が苦しげに眉を顰め、口を開く。
「…手紙を読んだか?」
澄佳が長い睫毛を瞬く。
「…え…?」
「宮緒に託した手紙だ。
…読んでくれたか?」
遠い記憶を手繰り寄せる。
…東京から引っ越したあの日…。
宮緒が一通の手紙を澄佳に渡した。
…けれど…。
「…いいえ。読まなかったわ」
読まずに破り捨て、内房の海に捨てた…。
未練を残したくなかったからだ。
「…そうか…」
片岡は小さくため息を吐いた。
「…手紙に…俺はこう書いた。
俺は君が怖かった。
誰よりも愛していたが、怖かった。
何年経っても穢れることがない君に…畏れを抱いていた。
…君が一途に俺に尽くしてくれればくれるほど、怖かったんだ。
だからわざと、ほかの女と浮気した。
君が俺に愛想を尽かせば、いいとすら思っていた。
けれど自分からは、君を手放したくはなかった。
だから距離を置こうとしたんだ。
…妻が君を殺めようとして…俺はもう君の元には戻れないと思った。
すべては俺が元凶だからだ。
妻に付き添うことが、妻と君への償いだと…。
…けれどもし、君が今も俺を愛してくれているのなら、待っていてほしいと…。
何年かかるか分からないが、待っていてほしいと…。
そう書いたんだ」
![](/image/skin/separater43.gif)
![](/image/skin/separater43.gif)