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フリマアプリの恋人
第7章 秋桜の秘密
「…そんな…」
澄佳は形の良い唇を噛みしめる。
…勝手なひと…。
…けれど私は、傲慢で大胆不敵な彼を愛していたのだ。

…内房の静かな町…。
変わらぬ風景と変わらぬ人々…。
それらの中で、時には窒息しそうに鬱屈していた若い澄佳を、片岡は疾風のように攫っていった。
…その胸に秘めた欲望を思う様に晒して…連れ去っていってくれたのだ…。
そうして澄佳は間違いなく…あの頃の彼をとても愛していたのだ。

俯く澄佳に触れはせずに、片岡は穏やかに尋ねた。
「…澄佳はもし手紙を読んでいたら、俺を待っていてくれた?」

澄佳はゆっくりと貌を上げ、微かに頷いた。
「…待っていたと思うわ…。
あの頃の私は…どうしようもないほどに、貴方が好きだったもの…」
澄佳は笑った。
お天気雨のような涙が、透き通るように白く美しい頬に流れる。

片岡は小さく…眩しげに微笑った。
それは、澄佳が一番大好きだった男の表情であった。
「…ありがとう。
それで充分だ」
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