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フリマアプリの恋人
第3章 紫陽花のため息
登録したてのメールアドレスに初めてのメッセージを打つ。
…まずはお詫びだ。
いや違う。
もっと伝えたいことを伝えなくては…。

「澄佳様
ありがとうございます。
心から感謝申し上げます。
メールアドレスを教えてくれて、ありがとう。
僕にチャンスをくれて、ありがとう。
…もっと気の利いたことを話したいけれど、嬉しくて興奮してしまい、ほかに思い浮かびません。
まるで思春期の少年みたいになっています。
もっとも僕は思春期にこんなに舞い上がったことはありませんが…。
…有頂天になってはいけないと肝に命じております。
けれど、これだけは言わせてください。
貴女が好きです」

…とても三十過ぎた文学部の准教授の書く文章とは思えない。
しかし、これ以外の言葉が思いつかない。
仕方ない。
恋はひとから論理的な思考も言葉も奪うのだと、柊司は生まれて初めて知ったのだ。

澄佳の気が変わらない内にメールを送らなくてはならない。
柊司は文章を読み返すこともなく、送信ボタンを押した。




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