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フリマアプリの恋人
第3章 紫陽花のため息
「そろそろ、店じまいにするか?澄佳」
幼馴染の涼太が声をかけるのに、澄佳はぼんやりとグラスを洗い続けていた。

涼太はため息を吐きながら、澄佳の立つカウンターキッチンに近づく。
「お〜い。どうした?澄佳ってば」

はっと我に帰り、慌てて水道の蛇口を締める。
「…ごめん…涼ちゃん。何?」
「…もう客も来ないだろうから、店仕舞いするか?て聞いたんだよ。
…どうした?具合でも悪いのか?」
澄佳の額に手を合てる涼太をさりげなく避けながら、笑ってみせる。
「大丈夫。元気だよ。…ちょっと…考えごとしてただけ」
そんな澄佳を、涼太はやや寂しげに見つめた。
「…お前、最近ずっとそんな風だからさ。
どうした?何か悩みでもあるのか?
…考えごと…て、誰のことを考えてたんだ?」

…瞬間、一人の男の言葉が脳裏に鮮やかに蘇る。

「…僕は貴女が好きです。
貴女は美しい…。
それは容姿のことではありません。
貴女の作品、文章…そして貴女の生き方そのものが美しいのです」

「…嘘よ…。嘘だわ。…そんなこと…あるわけない」
思わず声に出してしまい…慌てて口元に手をやる。
「…ごめん、涼ちゃん…。
…なんでもないの…」
涼太は暫く澄佳を黙って見つめていたが、やがて思い切ったように問いかけた。
「…お前、好きな男でも出来たのか?」
その言葉に、はっとしたように澄佳は表情を変えた。
直ぐにわざとぶっきらぼうに否定する。
「そんなこと…あるわけないじゃない」
そうして、さっさと店の入り口に歩き出し、
「もう今日はお客さんも来ないね。雨も降りそうだし…」
扉のガラス窓をみつめながら呟いた。
澄佳の後を追うように歩み寄り、涼太は意を決して声をかけた。

「…澄佳、本当に好きな男がいないなら、俺は…」
…言いかけて、澄佳がガラス窓の向こうに釘付けになっているのに気づき、そちらを見遣る。

一台の紺色のアウディが店の前に停まっていた…。

…車内から背の高い身嗜みの良い一人の男が現れ…その男は、こちらに向かってゆっくりと歩いてくるところであった。



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