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フリマアプリの恋人
第3章 紫陽花のため息
…どうしてこんなことになったのだろう…。
隣室で寝んでいるであろう男を思い、澄佳は胸の騒めきを抑えることができなかった。
稲光は止んだが、強い雨風は依然として窓を、激しく叩いている。
澄佳は、風呂上がりの濡れた髪をタオルでゆっくりと拭いながら、祖母から譲り受けた古い鏡台の前に座った。

…どうして…あんなことを言ってしまったのだろう…。

「…泊まっていらしてください。お願いです。
こんな雨の中、清瀧さんを帰したくないんです。
…でも…こんなこと、自意識過剰みたいで言いたくないんですけど…そう言うつもりではないんです…。
…あの…」
やや混乱しながら言葉を探す澄佳を瞬きもせずに、柊司はじっと見下ろしていた。
やがて、ふわりと安心させるように微笑った。

「分かりました。
澄佳さんの仰っている意味も良く分かりました。
僕を信用してくれて、ありがとうございます。
それでは一晩、お世話になります」

その答えを聞いて、身体から力が抜けるようにほっとしたのをまざまざと思い出す。

…鏡に映った自分は白い肌がしっとりと輝き、瞳が潤んでいた。
今までにないその艶めきに澄佳は戸惑いつつも、胸の奥から湧き上がる甘い疼きを、止めることができなかった。
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