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フリマアプリの恋人
第3章 紫陽花のため息
階下に降り、澄佳の姿を探す。

…先ほど眺めた紫陽花の垣根に、その姿はあった。

澄佳は紺色のリボンが巻きつけられた鍔の広いストローハットを被っていた。
ふんわり膨らんだの七分袖の生成りのブラウスに下はベージュのクロップドパンツ…サンダル履きの足は素足で、その白さが眩しい。

澄佳は園芸鋏で紫陽花の花を手折っていた。

…視線を感じたのか、彼女がふと振り返った。

柊司の姿を涼やかな黒い瞳が捉え、少し驚き…直ぐにややはにかんだように微笑んだ。
縁先に立つ柊司に、澄佳は近づく。
「よくお寝みになれましたか?」
「はい。ぐっすりと…。
…すっかり良いお天気ですね。
海が綺麗で見惚れてしまいました。
こんな景色を毎日見られるなんて、羨ましい」

褒められて、照れ臭そうに肩を竦める。
「…田舎には風景しか取り柄はありませんから…。
…でも…晴れて良かったです…。
貴方に綺麗な海を見ていただけて…」
見上げた澄佳の眼差しは無垢そのものだ。

抱き寄せてしまいたい衝動を抑えて、口を開く。
「…その花は?」
澄佳の白い手の中の蒼い紫陽花に眼を向ける。

…ああ…と小さく笑い、澄佳は縁先をしなやかに上がる。
「お店のテーブルに飾るんです。
…今は紫陽花が綺麗だから…」
「お店の名前も紫陽花ですね」
澄佳が頷く。
「…この辺りは菜の花が有名なのにね…。
祖母が名付けたんです。
若い頃、祖父が紫陽花を摘んできて祖母にプロポーズしたんですって…。
だから紫陽花食堂…て」
…ロマンチックでしょう?
そう笑いかけた澄佳は無邪気な少女のようだった。

「とても素敵です」
澄佳は嬉しそうに笑った。
…そして、闊達な口調で続けた。

「さあ、朝ごはんにしましょう。
お腹が空いたでしょう?」
…その薄紅色が透ける綺麗な耳朶には、海の色をそのまま閉じ込めたようなアクアマリンの小さなチェコビーズのイヤリングが揺れていた。
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