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フリマアプリの恋人
第3章 紫陽花のため息
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「…朝からすごいご馳走だ…。
旅館の朝食みたいですね」
感心したように声を上げる柊司に、澄佳は恥ずかしそうに俯いた。
「これも賄いです。
…でも…いつもの朝ごはんよりは…豪華ですけど…」
素直な言葉が愛おしい。
柊司は店内の客用テーブルに並べられた澄佳の心尽くしの朝食に眼を見張った。
…焼き立ての鯵の干物、鰹の角煮、色あざやかなだし巻き卵、瑞々しいきゅうりと若布の酢の物、蕪と人参と茄子の糠漬け、味噌汁の具は浅蜊だ。
炊きたてのごはんはぴかぴかと白く輝いている。
ご飯茶碗を手渡しながら、澄佳は説明する。
「お昼の定食は和食を出すのです。だからついでです。
気にしないで下さい」
気を遣わせまいとする心根が優しい。
「ありがとう。では、遠慮なくご馳走になります」
一礼して、箸を取る。
澄佳と向かい合って、朝食を摂ることが何となく気恥ずかしくもあり…しみじみと嬉しい。
…澄佳の心尽しの朝食の数々はすべて美味しかった。
干物は食べたことがないほど新鮮だったし、浅蜊も大振りで甘みがあった。
だし巻き卵は砂糖を少し効かせたどこか懐かしい味だ。
「美味しいです。本当に…」
感想を告げる柊司を、眩しげに見遣り微笑んだ。
「…お口に合って良かったです。
清瀧さん…普段、朝ごはんは?」
良く漬かった蕪を口に入れ、苦笑いする。
「朝はコーヒーを飲んで出勤する感じです。
…実家にいるときは、きちんと食べていたんですけれどね…」
…実家にいるときは、由貴子が毎朝きちんと朝食を用意してくれていた…。
由貴子の作る朝食は、澄佳の作るものとは違う味だが、美味しかった…。
柊司の好物は必ず一品誂えてくれたっけ…。
…と、澄佳の前で由貴子を思い出すのはなんとなく後ろめたくなる。
昨夜の別れ際の由貴子の切なげな表情が脳裏に蘇り…柊司の胸はちくりと痛んだ。
旅館の朝食みたいですね」
感心したように声を上げる柊司に、澄佳は恥ずかしそうに俯いた。
「これも賄いです。
…でも…いつもの朝ごはんよりは…豪華ですけど…」
素直な言葉が愛おしい。
柊司は店内の客用テーブルに並べられた澄佳の心尽くしの朝食に眼を見張った。
…焼き立ての鯵の干物、鰹の角煮、色あざやかなだし巻き卵、瑞々しいきゅうりと若布の酢の物、蕪と人参と茄子の糠漬け、味噌汁の具は浅蜊だ。
炊きたてのごはんはぴかぴかと白く輝いている。
ご飯茶碗を手渡しながら、澄佳は説明する。
「お昼の定食は和食を出すのです。だからついでです。
気にしないで下さい」
気を遣わせまいとする心根が優しい。
「ありがとう。では、遠慮なくご馳走になります」
一礼して、箸を取る。
澄佳と向かい合って、朝食を摂ることが何となく気恥ずかしくもあり…しみじみと嬉しい。
…澄佳の心尽しの朝食の数々はすべて美味しかった。
干物は食べたことがないほど新鮮だったし、浅蜊も大振りで甘みがあった。
だし巻き卵は砂糖を少し効かせたどこか懐かしい味だ。
「美味しいです。本当に…」
感想を告げる柊司を、眩しげに見遣り微笑んだ。
「…お口に合って良かったです。
清瀧さん…普段、朝ごはんは?」
良く漬かった蕪を口に入れ、苦笑いする。
「朝はコーヒーを飲んで出勤する感じです。
…実家にいるときは、きちんと食べていたんですけれどね…」
…実家にいるときは、由貴子が毎朝きちんと朝食を用意してくれていた…。
由貴子の作る朝食は、澄佳の作るものとは違う味だが、美味しかった…。
柊司の好物は必ず一品誂えてくれたっけ…。
…と、澄佳の前で由貴子を思い出すのはなんとなく後ろめたくなる。
昨夜の別れ際の由貴子の切なげな表情が脳裏に蘇り…柊司の胸はちくりと痛んだ。
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