この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
フリマアプリの恋人
第3章 紫陽花のため息
朝食を済ませ、身支度を整えた柊司に澄佳は小さな白い紙包みを手渡した。

「妹さんに、差し上げてください。
…昨日、出来たばかりの新作です」
そっと開けて見ると、葡萄の房を模したアメジスト色とオリーブグリーンのチェコビーズのイヤリングであった。
小さめなので派手にならず、けれどさり気なくセンスが光るイヤリングだ。
「…とても綺麗だ…。
ありがとう。瑠璃子が喜びます」
柊司の言葉を受け、恥ずかしそうに涼やかな眼を細めた。
「気に入っていただけたら、嬉しいです」

…店の扉を開けて、外に出る。
朝の爽やかな光りと新鮮な潮風が、柊司の身体を押し包む。
見送りに出た澄佳と並び、暫し目の前の紺碧の海を見つめる。
…別れ難い気持ちが二人の間に横たわるのを、確かに柊司は感じていた。

柊司は澄佳を振り向いた。

…そっと手を伸ばし、その華奢な身体を引き寄せる。
澄佳はびくりと身体を震わせたが、拒まなかった。
そのまま静かに優しさだけの抱擁をする。
…柔らかな…花の薫り…。
その花の薫りに、微かな潮風が混ざる。

「…いつか僕を、貴女の恋人にしてください…。
ゆっくりでいいんです。
少しずつ、僕を知って…いつか僕に恋してください…。
僕はいつまでも待ちます…」
その透き通るような白い耳朶に囁いた。

「…清瀧さん…」
震える声…。
宥めるように、その背中を優しく抱きしめた。
「…いい?澄佳さん…」
尋ねる柊司に、小さな頭が微かに頷いた。

静かに抱擁を解き、見つめ合う。
涼やかな…けれどしっとりと湿度を含んだ美しい瞳が柊司を見上げた。
その美しさに魅入られたかのように、そのまま形の良い顎に手を掛け、引き寄せ…その無垢で傷つきやすい花のような口唇に、そっと触れるだけのキスをした…。

…夏の始めののどかな潮騒が、二人を柔らかくつつみ込み、垣根の紫陽花が静かに揺れた…。




/332ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ