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御主人様のお申し付け通りに
第11章 元旦那との別れ
食事は俺が作る。

と、言われてしまったら…。

やれない訳でもないのに、やらない訳にはいかないでしょ。

先に帰って来るのは、私なのに。

今夜は、かに玉。

夕方まで玉子が、98円で有ったから。

安い食材で…って。

このケチケチして家庭的な自分が…本当は
何か凄く嫌だ。

フン♪フン♪フ~ン♪

ヤバい…ひっくり返せない。

すると、永田がタイミングよく帰って来る。

「うわっ!!何をしてんだよ」

「…かに玉」

「無理な事はやらんでいいって言ったろ?」

無理な事?

無理な事とまでは、言ってない。

「ほら、どけ」

永田は作業服のまま、台所に立つ。

パパッと、かに玉をひっくり返して火を弱めた。

「うまいね」

「おまえよりはな」

なんだ、それ。

「おまえは料理したくないんだから、こんな事しなくていいんだよ。自分の食べたい時だけ自分で作ったらいいんだよ」

と、私を台所から遠ざけようとする。

何か嫌な言い方。

「そうだけどさ…」

「他人のために自分の時間を犠牲にしたくないんだろ?」

「…そうだけど…そうなんだけど…」

でも、家に一緒に住んでるのに、私は何もしない訳には…。

「どうした?」

「…だって、だって…」

「おまえが求めてるのは、こういう扱いをして欲しいって事なんだよ?」

えっ…。

ズキンと胸が痛くなった。

永田は私の手を握る。

「何か、文句ある?」

優しく、嫌な言葉を吐かれる。

「…ないです」

「よし、着替えてくるから続きをよろしく」

頭をポンポンされた。

もう私の性格、見透かされてる。
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