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歳下の悪魔
第2章  天使と悪魔


「はい、優華」
 タッチパネルを渡され、私も呑み物を選んだ。
「私、レモンサワーでいい。はい、和真くん」
 私生活でも、今は美月がいる。
 目の前の彼に、タッチパネルを渡した。
「優華は、チャレンジしないねー。ラフランスサワ―の他にも、期間限定とかあるのにー」
「いいの。普通ので。一課じゃないんだから」
 一課では新作メニューを作るため、私生活で色々と食べてみるらしい。二課の私達は分析や解析をするだけ。食品の味が分からなくても、全く支障がない。
 私と美月の遣り取りを聞いて、和真が笑っている。
「じゃあ俺は、こっちの新作の、生メロンサワーにします」
 そう言って頼むと、タッチパネルを美月に帰す。
 この顔が全てなら、私だってある意味天使だと思える。裏の顔が悪魔だから、普段が天使に見えるだけ。
「お腹空いたなー。何にしよう……」
「私は、タラスパ頼んでおいて」
「優華は、いつも無難だなー」
 美月は身を乗り出して、和真と新作の所を見ているが、私は無難でいい。
 独り身の32歳として、普通に生活したいだけなのに。彼氏なしで平穏とは言えないが、仕事をしてマンションに帰る。たまに美月と食事を兼ね呑みに来て、やはり1人のマンションへ帰るだけ。
 そんな生活を壊したのは、和真。彼さえ現れなければ、私は今まで通りだったのに。
「お待たせしましたー」
 それぞれの呑み物が届き、乾杯する。
「ラフランス、当ったりー。凄く美味しいよー」
「俺の生メロンも、美味しいです」
 2人が喜んでいることでさえ、私は楽しくなれなかった。美月か他のメンバーなら素直に笑える。和真がいるだけで、心の奥の恐怖心が大きくなっていた。
 美月と和真でいくつか食事やつまみを頼み、タッチパネルを戻す。
「ねぇ、和真くんは、彼女いるのー?」
「今は、いません。大学時代に、別れちゃいました」
 あんなことを強要すれば、恐怖感を持つだろう。それともその彼女は、縛られるのが好きだったのだろうか。
 縛られた時のことを思い出しただけで、体が震えた。それを誤魔化すために、届いていたパスタを食べた。


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