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虜 ~秘密の執事~
第2章

軽井沢から戻ったその翌日、椿は学校の登校日の為セーラー服の夏服に袖を通していた。
スカーフはいつも曲がってしまうので榊に結んでもらっていたが、昨日の黒澤とのことを思い出し後ろめたくなった椿は、ウォークインクローゼットの中でスカーフと格闘していた。
「お嬢様? 時間に間に合いませんよ」
そう言いながら入ってきた榊に、椿は鏡越しに視線を合わす。
「あ、うん。もう出来るから……」
「私が致します」
榊はそう言うと椿の手からスカーフを取り上げる。
紺色のスカーフをセーラーの襟に通し直した榊の手がふと止まる。
「榊……?」
首元を見つめていた榊の顔がみるみる強張る。
椿は怪訝に思い鏡に自分の首を映す。
するとそこにはほんのりと昨日の情事の痕が残っていた。
「榊、これは……」
言い訳しようと思った椿の口を、榊は自分のそれで塞いだ。
「んく……!」
生まれて初めての口付けに、椿は只されるがままになるしかなかった。
後頭部と腰をしっかりと抱きこまれ、噛みつくように口内を蹂躙するそれはキスなんて甘いものではなかった。
歯列をなぞられ舌を絡め取られ、軽く噛まれる。
その度に自分の中心が潤むのを椿は感じていた。
(私ったら……キスでまで濡れるの……?)
その驚きと榊の方から自主的に与えてくれる愛撫に、椿は酔いしれた。
ようやく離された唇から熱い息が漏れる。
椿は腰が砕けた様に榊に凭れ、その首に腕を巻き付けた。
榊は椿をそのまま抱き上げると、隣の寝室へと連れて行った。
そして椿をベッドに座らせると自分は扉とカーテンを閉め、内線でどこかへ電話を掛けた。
「お嬢様は体調がお悪いとのことで、本日は学校をお休みになるとのことです」
そう言って受話器を置き振り向いた榊は、今までにない程壮絶に美しかった。
黒澤への嫉妬がそうさせたのだろうか、怒りに震える様は見つめる椿の視線を逸らすことをさせなかった。
「逃げるなら、今ですよ」
そんな事など椿に出来る訳がないと分かっていて、榊は最終宣告をする。
「榊、来て――」
椿は両腕を伸ばしてそう言うと、ネクタイを外しながら近づく榊の首に抱きついた。

