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欲望の行末 ~愛しのアンドロイド~
第2章  

「そうじゃないっ――!! とにかく止めて!」

「はい」

祐二はそう返事をすると、するりと絢の身体から手を離し、テレビの電源を切った。

「あ、あのねえ……こういう行為は」

「セックスですね?」

言葉を濁した絢とは対照的に、祐二が濁さず口にする。

「そ、そう、せ……セックス。セックスはね、愛し合っている男女がやるものなの。付き合ってるカップルとか、夫婦とか……分かる?」

何でこんなことを私が教えなければならないんだと思いながら、絢はこんこんと説明する。

「はい」

「私と祐二さんは?」

「主と使用人アンドロイドです」

祐二の的確な答え。

「そうよ。やったらダメでしょ?」

「そうですか。このDVDはお互い初対面の男女の様でしたが……なかなか難しいですね……」

「……っ!? た、たまにね! ……ごくたまにそういう時もあるの。なんていうの、お互いムラムラした時とか……」

絢は言いにくそうに口ごもる。

「ムラムラ……でございますか?」

大きな声でそう反復する祐二に、絢はまなじりを上げる。

「……っ! と、とにかく、私達には必要のない行為なんだから! 忘れるのよ、いい?」

人差し指で指さしてそう言い聞かせる絢に、祐二は納得がいかないようだが、やがてポンと手を一つ叩くと、心得た様に頷いた。

「なるほど……はい。わかりました」




と説得が上手くいった筈の日から、数日後。

絢は自室のベッドの上で驚愕していた。

「だから! なんでまた、夜這いしてくるのよ?」

そう叫んだ絢に、祐二は至極真面目に返事をする。

「月経前症候群です」

「は?」

聞いたことのない病名(?)に、絢は間抜けな声を返す。

「哺乳類である人間は、排卵があると子孫を作るために発情するようになっています。絢様もいま、そのような状態とお見受けします」

(は、発情――っ!?)

「つまり、絢様は今、ムラムラしていらっしゃるので、主と使用人でも、セックスをしてもよい状況かと思われます」

ぽかんとした絢は、なんだかすごいことを言われているなあと妙に冷静に考えていたが、ふと我に返る。
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