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欲望の行末 ~愛しのアンドロイド~
第2章

ぱっと頬を赤らめた絢の背を、木内がポンと叩く。
「行っていいよ」
「でも……」
「俺の事なら気にしないで、実は……怒らないで聞いてくれる?」
「………?」
「俺、実は直美ちゃんの方に興味があるの。実は何回もデートに誘ってるだけど、付き合ってくれなくてさ。それで絢ちゃんをだしに使えば、少しは俺の事を気にしてくれるかなあって……ごめんね?」
木内のその告白に、絢の顔がぱあと明るくなる。
「ううん。そうなんだ! 上手くいくといいね。私からも直美に言っとくよ」
「そう? ありがとう。ほら、行った行った!」
木内に謝りながら、絢はその場を去った。
電車を乗り継ぎ、うちに到着すると絢はすぐその異変に気付く。
いつもなら絢が玄関ノブに手を付ける前に中から開けられるのに、今日に限っては鍵を開ける音さえしない。
ピンポン。
呼び鈴を鳴らしてみるが、反応もない。
「買い物でも行ってるのかな?」
自分でカギを開けて中に上がると、やはり祐二の姿はなかった。
お茶でも飲もうとダイニングに入ると、テーブルに、手紙が一通置かれていた。
「手紙……祐二さんから?」
白い封筒から手紙を取り出すと、絢は凍りついた。
(……嘘……)
ロックを施錠して貰う為、マサチューセッツまで行ってまいります。 祐二
なぜだか体ががくがくと震えた。
彩は手の中の手紙をくしゃりと握りしめてしまう。
「な、何で……? アンドロイドには気持ちが無いって言ったじゃん。気持ちが無かったら、ロックを施錠しなくったって、止められるじゃない……!!」
絢は鞄の中から携帯電話を取り出し、アドレス帳を開く。
しかし、そこには彼の電話番号もメールアドレスも登録されていなかった。
(そうだ……祐二さんに携帯持たせてない……)
「パパ、パパなら知ってるはず!」
絢は焦る手で父親の携帯番号をコールする。
『こら、絢~。今こっち何時だと……』
向こうは深夜だったのだろうか、そんなのは今の絢には関係なかった。

