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欲望の行末 ~愛しのアンドロイド~
第2章

「パパ! 大変なの、祐二さんがそっちに一人で向かって……」
『ああ、聞いてるよ。今日発つんだよね』
「そう。何時の飛行機か聞いてる?」
『えっと……成田を八時だったと思うけれど』
父親が眠そうな声でそう伝える。
「八時っ――!? 後二時間半しかないじゃない!」
『何を焦ってるんだ? もしかして、三号はお前に渡米の事、言ってなかったのか?』
「……っ! ごめん、パパ。ありがと」
『おい、こら絢……』
まだ父親が言いかけているにも関わらず、絢は携帯電話をオフにする。
そして、お財布を手に取ると、まさに転げ出る様に玄関から飛び出した。
成城の家から成田まで約二時間弱。
絢は最寄駅までタクシーで行くと、そこから小田急、JR、京成と乗り継いで、成田国際空港へと向かう。
その間中、ずっと絢は祐二からの手紙を握りしめていた。
(私は祐二さんの事を傷つけてしまったんだ。セフレだから、私にボーフレンドが出来たら、少しは焼いてくれるかなって試したりして……)
結局、私――、
祐二さんの事が、好き――なんだ。
絢は頭の中で、ロックが外れてからの祐二のことを思い出す。
いつも絢に構ってほしそうで、どこにでも付いてきていつも絢に怒られていた祐二。
私の男性恐怖症を見抜き、優しく治してくれた祐二。
エッチの最中は人が変わったように執拗で、まるでそれが彼の本性で、ヤキモチ焼きで……誰よりも絢に夢中で……そう思わせてくれた祐二。
彼の事を思い出すと、ぎゅうと胸が締め付けられる。
苦しくて、切なくて、涙が零れそうになるのに。
(これが恋じゃなくて、なんだって言うのよ――!!)
絢がぐっと下唇を噛んで、涙を我慢した時、電車がホームへ滑り込んだ。
「成田国際空港~、成田国際空港に到着いたしました、降り口は……」
そのアナウンスに立ち上がると、絢は扉が開くと同時に電車から飛び降りた。
長い長い廊下を抜け、また長いエスカレーターにたどり着く。目の前に人が立って先を阻まれ、絢は手元の時計を覗いた。
(後、十分――!? そんな、搭乗だって終わってるかも……!)
「すみません、通してください!」
絢はそう断って、また長いエスカレーターを駆け上がる。
国際線の出発ロビーに着き、絢は肩で息をしながら、自分の過ちに気付いた。

