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欲望の行末 ~愛しのアンドロイド~
第2章  

(私、チケット持ってないから、入れないんだ――)

出国手続きの職員に話してみたが、もちろん駄目と通過を断られた。

「そんな、そんな……すぐ、そこにいるのに……」

職員に近くの椅子に誘導され、座らされる。

「いや、いやぁ……行かないで……祐二~っ!!」

泣き出してしまった絢にティッシュを渡すと、職員は持ち場へ戻っていった。

ざわざわという人いきれ。

ポーンという場内アナウンス。

そういった音が、絢の耳から掻き消された。

(もう……きっと元の祐二さんには、会えない……)

お節介で、エッチで、私の事を一番だと言ってくれる祐二には――。

十分後。

絢は何とか落ち着きを取り戻して、涙を拭い顔を上げる。

同時にシャットダウンされていた音も、騒がしく鼓膜を震わせた。

絢がぐったりした身体に鞭を打ち、立とうとしたその瞬間、

「絢様」

上から掛けられる、懐かしい声。

絢はスローモーションの様に、ゆっくりと頭を上げる。

「うそ……だって、飛行機乗って……」

信じられないことに、そこには祐二が立っていた。

絢は自分の時計を確認するが、離陸時間からもう二十分程経っていた。

瞳を真ん丸にしてこちらを見上げる絢に、祐二が苦笑する。

「……聞こえたんです、絢様が私を呼ぶ声が……」

そうだった。

超音波まで聞き逃さない祐二の耳。

広い空港の中でも、すぐに絢の事を見つけ出してしまったのだろう。

最初それを聞いた時は「何のために? 無駄な機能」と、呆れ返っていたが、今、絢は心の底からこんな機能を持たせてくれた父親に感謝した。

「しかし、私の搭乗を止めたいのであれば、空港に電話してくださればよかったのに。絢様の所有物である私は、貴女から搭乗の差し止めが入れば、搭乗出来ません」

「あ……」

絢はその時初めて、自分の失態に気付く。

「忘れてたの、祐二さんがアンドロイドだって……私の大切な人がいなくなっちゃう……それだけしか考えられなくって――!!」

絢の瞳から大粒の涙が零れ落ちる。 

それがぱたりと床に落ちるよりも早く、絢は祐二の胸に飛び込んでいた。

「絢様――?」

驚いた祐二が、ぎゅっと絢を抱きとめる。
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