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欲望の行末 ~愛しのアンドロイド~
第2章
「そう、よろしくね……そっか。じゃあ祐二君二号とは今日でお別れなんだ……」
「絢様。本日マデ、大変オ世話ニナリマシタ」
「こちらこそありがとう、二号君。君がいてくれて助かったわ」
絢はそう礼を言うと、鋼鉄製の頬にそっとキスをする。
二号はお辞儀をすると、自分から木の箱に収まった。
「さようなら。本当にありがとうね。パパによろしく」
「ハイ。マスター」
二号が瞼を閉じたのを確認し、絢は額のボタンをポツリと押す。
その瞳から一筋涙が零れ落ちたが、絢は恥ずかしそうにすぐ拭った。
「配達、よろしくお願いします」
隣の配達屋にそうお願いすると、彼はまたテキパキと梱包を済ませ帰って行った。
絢はふ~と息を吐き出すと、玄関のドア閉める。
くるりと振り返ると、そこには人間にしか見えない青年が立っていた。
「しっかし、今回の三号君は凄いね! どっから見ても人間にしか見えない」
そう感嘆した絢に、三号はにっこりと微笑む。
「ありがとうございます。このバージョンはより人間に近づけるのを目的に開発されました。まだこの世界に私の一体しかおりません。岬教授の技術の推移を集められた一体です」
「そ……。パパ元気?」
「はい。毎日意欲的に研究に取り組んでいらっしゃいます。絢さんの写真はいつも持ち歩いていらっしゃいますよ。ちなみに私の骨格等は、岬教授の二十歳の頃をモデルに作られています」
「だろうね……若いときのパパの写真って数回しか見たことないけど、瓜二つだもの」
絢の父は現在四十二歳。
早くに妻と死に別れ、現在は一人娘の絢を日本に残し、アメリカのマサチューセッツ工科大学で工学博士としてロボットの研究を続けている。
そしてたまに使えそうなロボットが出来ると、こうやって絢に送りつけてくるのだ。
「しかし自分の若い時の顔で造るなんて、パパってば結構ナルシスト?」
絢はそういうと、しみじみと三号の顔を見る。
流線型の輪郭に、優しげで少し甘さのある目元、形の良い引き締まった唇。
「いいえ。岬教授は絢様がいつも自分と離れていて寂しいだろうからと、私をこの顔に作られました。ちなみに若い理由は、『よくある娘の反抗期に、パパ嫌いと言われる現象を避けたいがため』だそうです」
「あ……そ……」