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欲望の行末 ~愛しのアンドロイド~
第2章  

呆れた理由に嘆息しながら、自分の部屋に戻る。

制服から着替えようとして、絢ははたと止まる。

「ごめん。後ろ向くか、外で待っててくれる?」

「どうしてですか。私はロボットなので、感情はありませんが」

「どうしても! なんかパパに見られてるみたいで、やだ!」

「かしこまりました」

三号はそう言うと、くるりと後ろ向いた。

絢はやっと着替えを始める。

「三号君。これから祐二さんって呼ぶね」

「祐二……でございますか?」

「うん。パパが祐一だから、貴方は祐二さん……やだ?」

「滅相もございません。名前を付けていただいたことなど、今までなかったもので……しかし、呼び捨てでよろしいですよ?」

「ううん、祐二さんって呼ぶ。設定年齢を考えたらそうすべきでしょ」

「分かりました。制服をお預かりします」

着替え終えた絢から、祐二は制服を預かる。

その際に軽く触れた肌が暖かくて柔らかいことに、絢が気付く。

「わ、凄い! 見た目だけじゃなくてさわり心地も人間と同じだね」

絢は祐二の手を取る。

暖かくて柔らかいけど、少し硬い。

二十歳の青年そのものの細長いけれど角ばり、少し血管の浮き出た掌。

「はい。『どこもかしこも人間と同じように!』が今回の岬教授のこだわりです」

「どこもかしこも……」

そう言った途端、自然と絢の視線が制服を片付けてくれている、祐二の下半身に移る。

「全身をご覧になりますか?」

祐二は少し首を傾けると、お仕着せのネクタイにグローブに包まれた手を伸ばす。

「いいっ!! 脱ぐな! 脱がないで!!」

「そうですか? では、ご用がないようでしたら、食事の支度をしてまいります」

「はい、ないです! どうもありがとう」

赤くなった絢を不思議そうな表情で見ると、祐二は絢の部屋から出て行った。





祐二との生活は快適そのものだった。

彼は学習能力に優れているらしく、一日で絢の行動パターンを分析、蓄積すると、翌日からは完璧な使用人としての働きをしてくれた。

また、人間の色んなことに興味を持つように設計されているらしく、絢に何かと構ってくる祐二にいつしか絢も心を許し、数日経った頃には、絢の話し相手にまで昇進していた。
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