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幸せの頂点
第12章 食事
焼けたお肉に軽くヒマラヤ産のピンクソルトを塗した部長が私に口を開けろと指示を出す。
アーンと子供のように開けた口に一口サイズのお肉が放り込まれる。
「お肉が…!?」
口の中で溶ける。
しかも溶け出した肉汁から芳醇なまでに広がるまろやかな塩の味。
「これが堪んねえんだよな。」
開けたスパークリングワインをグラスに注ぎ私と同じようにお肉を口に入れた部長がワインで口の中のお肉を流し込む。
その同じグラスを私に渡して試してみろと部長がワインを更に注ぐ。
お肉の油を流す爽やかなワイン。
シンプルでありながら完璧な食事。
「美味しい…。」
「紫乃も作るんだろ?」
自分の料理を終えた部長が私に場所を譲る。
藤原の料理と部長の料理…。
私の料理なんか作るべきじゃないかもしれないと、さっきまでの自信を失くしてく。
とりあえずボールにベビーリーフと大葉を刻んだ物と昆布締めした鯛の切り身を入れる。
醤油、みりんに胡麻油を少し入れたドレッシングを作りボールの中で食材と混ぜ合わす。
最後は香りと味のアクセントとして柚の皮と山葵を剃った粉を塗しお皿に盛り付ける。
「母のお料理…。」
私には懐かしい実家の味。
部長に一口を差し出す手が震える。
「すげー旨いじゃん。紫乃の味覚が確かなのはお袋さん譲りだな。」
ニカッと笑う部長の嬉しそうな表情を見て初めて母に感謝する。
お互いが作ったお料理をテーブルに並べて部長と今夜の夕食を始めた。
何故かワインのグラスは1つ。
藤原のお惣菜である大根の煮付けを味見する。
「嘘…、この大根…。」
有り得ないほどの甘味…。
大根の旨味を余す事なく引き立てる薄味。