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幸せの頂点
第12章 食事
「その大根を手に入れたいとか思ったろ?」
部長がニヤニヤとする。
「既に流通をしてないのなら…。」
バイヤーとしての欲望が疼く。
「残念だが流通しまくり。つか、その大根は京都の農家の何処ででも生産してる大根だ。」
「嘘っ!?」
「俺も確認した。そこまでの味を引き立ててるのは大根自身の味でなく料理人の腕ってやつらしい。」
「料理人の腕…。」
「紫乃のお袋さんだって生の鯛を昆布締めで味を引き立ててる。それと同じだ。」
「母はド素人ですよ。」
母はただの主婦だった。
「今もご実家に?」
「今は父と離婚して別の所に住んでます。」
私の言葉に一瞬、部長が顔を歪める。
「離婚?」
「ええ…。」
「理由は?」
「知りません。てかわからないんです。母に聞いてもはぐらかして答えてくれなかったので…。」
「一度、ゆっくりと会って話を聞いてみろよ。」
何故か部長が寂しげな顔をする。
「部長の御家族は?」
「姉貴と親父だけ。」
「お義母様は?」
「ガキん頃に亡くなった。」
聞いてはいけなかったかもと狼狽えた。
「紫乃が気にする事じゃないぞ。」
私の頭を撫でながら部長がワインを飲み干す。
部長の事をもっと知りたいのに…。
恋人を平気で裏切る最低な女が踏み込むべきかを迷っちゃう。
ワインでふわふわしてる。
部長に寄り添う身体が暖かくて気持ちが安らぐ。
食事を済ませて部長と2人で片付けてからベッドに行けば私はまた変な期待に胸を膨らませる。
エッチな女は嫌い?
部長を見れば部長が苦笑いをする。
「そういう顔はするなと教えたはずだ。」
私のYシャツのボタンを外して部長が言う。