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幸せの頂点
第14章 出張

百貨店で遅番の場合、夕方に食事休憩を取ってしまう部所もある。
てっきり私を待ってる間に部長は夕食を済ませてるかと思ってた。
「帰ってから食う。」
呟くように部長が答える。
「なら、何か買い物をして帰りますか?」
「買い物なら終わってる。」
「部長が?」
私の質問に部長が笑う。
「まさか紫乃は大食いか?」
「違いますよ。」
「この時間になる時の俺は適当な妻味をビールで流し込む程度だ。」
「覚えておきます。」
部長の恋人になるつもりなら予想外の行動をする部長の習慣や好みを覚えたいと思う。
部長の家に帰る。
「紫乃は風呂を済ませて来い。」
部長の機嫌が治ってる事にホッとする。
言われるがままにお風呂に行く。
お風呂から上がると私の着替えに何故か部長のYシャツが置いてある。
わざわざお姉さんのお店でヒラヒラのベビードールを買ったのに、それはスルーされたまま。
ブカブカのYシャツを来てリビングに行けば部長が入れ替わるようにお風呂に行く。
テーブルにはチーズのアラカルトに鴨のロースト。
後はサラダやガーリックトースト…。
確かにビールのお妻味だと笑っちゃう。
あの人はずっと、こういう暮らしをして来たのだと感じる。
そこに私が入る事に違和感を感じさせない人だ。
克とは気の遣い合いばかりして来た気がする。
どっちが夕食を作る?
どっちが先にお風呂に入る?
克だって疲れてるのだからと私が無理をする日もたくさんあった。
今はそれが過去のように思える。
広い窓の外をぼんやりと眺めてた。
「食ってなかったのか?」
背中越しに聞こえる声。
気を遣ってるというよりも驚きが含まれてる。

