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幸せの頂点
第14章 出張



老舗料亭が使う食材…。

この人が何者かを考えるのが怖くなる。


「親父が藤原と旧い付き合いだ。」


私に隠す事はないと部長は当たり前のように話をしてくれる。


「部長のお義父様って…、何をしてる方ですか?」

「ただの社長…。」

「何の?」

「さあな…。」


話したくない事はとぼけられる。


「紫乃の…、両親は?」


部長も私を知りたいらしい。


「うちの父は普通のサラリーマンで小さなマイホームを買って家族の幸せだけを考える人でした。母も平凡な主婦だったはずなのに、そんな父をいきなり捨てた女です。」


私にも、その母の血がしっかりと流れてる。

私との小さな幸せを夢見た克を平気な顔で捨てようとしてる。

罪悪感を部長に見せたくなくて部長に乾いた笑顔で話をする。


「それでも紫乃のお義母さんだろ?」


母親が居ない部長が悲しい顔をする。


「そうですね…、確かに彼女は私の母親だと思う。結局は私も母のように小さな幸せでは満足が出来ない欲深い女だったってつくづく思うもの。」


自分の非を認める。

父や母のようになりたくはないと小さな幸せに自分を偽ってでもしがみつこうとしてた。

なのに部長が現れた。

小さな幸せだけでは満足する事が出来ない自分を嫌という程に思い知らされた。


「紫乃を満足させる事が出来なければ、やっぱり俺も捨てられるのか?」


クスクスと部長が笑い出す。

手が私の髪を避けて耳に触れて来る。

今日1日中、期待してた身体が熱を帯びて疼き出す。


「挿れて…くれるの?」


部長に甘えた声が出る。


「どうするかな…。」


焦らす言葉を吐き残ったビールを部長が飲み干す。

お仕置きするって言ったくせに…。

今朝とは違い私の方が部長に拗ねた顔をする。


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