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幸せの頂点
第14章 出張

シャワーの後は出張用の荷物をまとめてから冷蔵庫を開ける。
前はビールしかなかった冷蔵庫にそれなりの食材が入ってる事に気付いた。
私が居る前提なんだと笑っちゃう。
ならばと私も彼が戻って来るのを前提で朝食の用意をする。
多分、部長はプールだ。
それが彼の日課みたいなものなのだろう。
そう予想した私が朝食の用意を終える頃にタオルを被った部長が帰って来る。
黙ってコーヒーカップを差し出せば部長も黙って私が作った朝食を食べてくれる。
穏やかな時間だと思う。
前からずっとこうしてたような錯覚を起こしそうなくらいに静かで幸せな時間だった。
「そろそろ行くぞ。」
8時前に部長が言う。
朝食を済ませれば部長と家を出る。
ここからの私は仕事に集中する事だけを考える。
恋人も仕事も両方を欲しがる我儘な自分を部長に見せつける。
彼はそれを理解した上で私が自由に動ける段取りをしてくれる人だ。
今朝は百貨店の駐車場まで堂々と部長が運転する車に乗っていた。
「行って来い。」
駐車場を出て部長と二手に別れる。
私はバックヤードから売り場へと…。
時間的に30分くらいしかないからと段取りよく商品を店舗に出していく。
明日までは何とかなる程度の品出しを済ませて再び駐車場に向かって走り出す。
車に戻ると部長の姿がまだ見当たらない。
「悪い。遅れた。」
私よりも5分遅れで部長が来る。
「大丈夫ですか?」
「高崎と話をしてたら社長に捕まった。」
「社長に?」
「娘の件だ。」
部長が露骨に嫌な表情を浮かべる。
「まさか…、食品部のフロアマネージャーに!?」
それだけは勘弁して欲しいと願っちゃう。

