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幸せの頂点
第15章 破局
「なら、道の駅と同様の価格なら納得をして頂けるのですか?但し、経費は別になりますが…。」
切り出し方を変えてみる。
「経費?」
「当然ですが、輸送コストやパッケージコストがあっての事です。それは何処のスーパーや百貨店でも同じ条件だと思います。つまり無人販売価格に経費をプラスした値なら納得をして貰えますか?」
「結局は百貨店価格になるって話なら断る。」
私がどう説得しても無駄な気がして来た。
克の件で苛立ちを感じてた私に冷静な判断が出来る状況でもない。
「わかりました。なら現在販売中の道の駅を教えて下さい。」
「道の駅なら、うちから真っ直ぐに行って30分程度で着く。」
ご主人の言葉で立ち上がる。
「阿久津、どうする気だ?」
今まで黙ったままだった部長がニヤニヤとして、とぼけたように聞いて来る。
「道の駅でここの茄子を買い占めます。」
「何故?」
「茄子から種を取って知り合いの生産者に栽培して貰う為です。ここでご主人を説得するよりもよっぽど早く入荷出来ると思いますから…。」
私の言葉に部長は吹き出して笑い、ご主人は目を丸くする。
「そんな簡単に栽培なんか出来る訳がない。」
「簡単じゃないとは思います。でもご主人が納得出来る価格を考えるよりも簡単だと思ってます。」
私が既に取り引きをしてる生産者にも茄子を扱う人が数人は居る。
そこに頼んで生産して貰う方が今の状況よりもよほどマシだと考える。
結局は流通する商品である。
問題は時間だけだと私は開き直る事にする。
「いい加減に諦めましょうよ。」
私の居直りに奥様がご主人を説得してくれる。
部長は成り行きをニヤニヤとして見てるだけだ。