この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
幸せの頂点
第15章 破局
克の問題も部長は自分には関係がない態度を取る。
そこに私は苛立ちを感じてしまう。
私が悪いのだろうけど…。
克の事で頭が支配されてしまう。
「わかった。なら価格は経費を形状する状況で妥協してやる。」
奥様の説得でご主人が納得をしてくれる。
「では、契約の方を…。」
後は契約を交わすだけ…。
なのに気持ちが落ち着かない。
喜ぶべき状況なのに…。
仕事として満足をすべきなのに…。
心に穴が空いたように素直に喜べない私を感じる。
こんなの仕事じゃない…。
部長のお膳立てで私は生産者にキレただけだ。
農家の家を出た瞬間に心のモヤモヤを吐き出す。
「前に失敗した人って、高崎さんの奥様ですか?」
私の質問に部長が嫌な表情を浮かべる。
「ああ…。高崎の嫁って梨花(りか)の事か?紫乃の前の担当者だからな。」
部長が好きだった人…。
高崎さんに取られた人…。
だから部長は私を克から取り上げたの?
そんな風にしか感じない。
歯車が狂うと全てが不幸な気分になる。
「梨花さんってどんな人でした?」
「どんなって、仕事に熱心な奴だった。今の紫乃と同じで何でも欲しがるタイプだったな。」
「何故、契約に失敗したのですか?」
「紫乃が見ての通りだ。ブランド嫌いの生産者にブランド価格の何が悪いと梨花は開き直った。元々、梨花はお嬢様だからな。」
私は平凡なサラリーマンの子。
梨花さんと同じように生産者に居直ったけど私の居直りは支離滅裂だったと部長が笑う。
「固定種ならともかく、F1種(改良種)だったら同じように育てても違う茄子が生産されてしまう。紫乃が幾ら買い占めて種を取っても流通分の生産が確保出来る可能性は10%以下だぞ。」
仕事として話をする部長。
私の頭の中は克と梨花さんの事ばかりで部長の言葉が入って来ない。