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幸せの頂点
第15章 破局
今夜は富士が見える旅館だと部長が言う。
「それ…、経費で落ちるんですか?」
「落ちる訳ねえよ。」
部長がまた苦笑いをする。
「だったら日帰りで良かったのに…。」
やっと部長と2人になれたのに…。
疑心暗鬼な心が素直な気持ちを閉ざそうとする。
「また怒ってんのか?」
とぼけたように部長が言う。
そうだと思う。
怒ってる。
克の見たくない姿を見た。
部長は梨花さんをまだ忘れてない。
私だけが思い描いた幸せから遠のく状況に怒ってる。
全部が部長のせいだ。
部長は私を克から取り上げたくせに…。
私は不幸のどん底に居る。
憎むべき人…。
なんで部長を選んだのかさえ疑いたくなる。
私を愚かな女にした男。
私は部長の何?
旅館にチェックインをしてから部長と2人で大浴場に向かう。
男女で別れて1人になる。
携帯の確認をする。
克から連絡があったかの確認だった。
私の見間違いだと思いたかった。
だけど携帯は無言のまま…。
始めから克という彼氏なんか存在しなかったような気分に落ち込みを感じる。
部長が言うように富士が見える温泉に入る。
夕日が当たる富士が真っ赤に染まり絶景だと思う。
なのに幸せのはずの時間が幸せだと思えない。
ぼんやりとしたままお風呂から出て浴衣に着替えて大浴場から出た。
「部長…。」
私を待っててくれてる。
「遅せえー。」
ぶっきらぼうな言葉。
「先に部屋に帰ってて良かったのに…。」
「置いてったら、また紫乃が怒るだろ?」
子供扱いされた気がする。
「そんな事くらいで怒ったりしないわ。」
大人の対応で部長に壁を作ろうとする。