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幸せの頂点
第15章 破局
部長はただ苛立ちをぶつける私を穏やかな目で見てるだけだ。
部屋に戻り2人だけになっても私の気持ちが落ち着かない。
「紫乃?」
「克があんな人だと思わなかった。」
「彼氏か?」
「部長だって…、本当の部長は私の知らない人かもしれない。」
「俺が?」
私の支離滅裂な考えに部長がクスクスと笑い出す。
「笑わないでよっ!」
克にキレたように部長にまでキレてた。
「笑わないで…。」
惨めで不幸な女が夢を見てると笑われてる気がして堪らない気持ちになる。
「来いよ。」
部長が私を引き寄せる。
部長の腕の中…。
心音だけが静かに響く。
私の幸せをぶち壊した憎い男のはずなのに…。
初めて恋したみたいにドキドキする。
部長は今も高崎さんの奥様が好き。
私は部長の紫乃だけど部長は私の部長じゃない。
それを考えるだけで泣きたい気分になる。
「そろそろ夕食だ。」
部長の連れられて部屋を出た。
食事は別の部屋。
部長から差し出されたビールを断る。
「飲まないのか?」
「そういう気分じゃないから…。」
「彼氏がそんなに気になるか?」
「それは違うと思う…。」
克が知らない人に見えた事が気になるのは事実だけども克にはもう気持ちが残ってない。
ただ自分が信じて来た事が否定された感覚を味わい全ての自信を失くした。
「部長にとって幸せってなんですか?」
くだらない質問をしてた。
「さあな、幸せとか考えた事ねえわ。」
ぶっきらぼうな返事。
「幸せを求める女って愚かだと思いますか?」
「そんな事はないだろ?俺が知ってる女は幸せになりたいからって家出までした馬鹿が居る。」
懐かしげに話す部長。
その人って高崎さんの奥様ですか?
聞けない言葉を飲み込んだ。