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幸せの頂点
第16章 決意

母が求めた幸せは美味しかったの一言。
「本当に、そんなのが幸せなの?」
それ以外は独りで寂しく暮らす事になる。
「うん…、それでも今が一番幸せなの。」
自信満々に笑顔を見せる母を羨ましいと思った。
「紫乃はなんで帰って来たの?結婚するかもって言ってたでしょ?」
母が話の確信に触れる。
父も多分、そこを心配してる。
もう28…。
克と結婚して幸せになるはずの娘が突然帰って来たのだから親としては心配して当たり前。
「自分が思い描いてた幸せが他の男の人のせいで偽りだと感じちゃったの。」
部長と浮気をしてしまった愚かな自分を正直な気持ちで母に話す。
「その部長さんとは?」
「部長とは…。」
そこまで話せば私の目から大粒の涙が出る。
「泣く事なんかないわ。幸せは人それぞれ。紫乃が納得の出来る幸せを探せばいいだけよ。」
母が私を慰める。
幸せは人それぞれ…。
母にとっての幸せの頂点は誰かに美味しかったと言われるだけの人生。
私の幸せの頂点は?
それをゆっくりと考えればいいと母が言う。
その日は眠くなるまで母と話をした。
「なんで水曜日だけお父さんが来るの?」
「水曜日ならお父さんの好きな物を用意してあげるって言ったら本当に毎週水曜日にお父さんが通うようになっちゃった。」
「寄り戻せば?」
「今は無理よ。お店を切り盛りするだけでお母さんは精一杯だから…。」
もう少し年老いて母が美味しかったの言葉に満足したら父との事を考えると母が言う。
今も父は母が恋しくてお店に通い、母は父の為にと父の好物を毎週水曜日だけに用意する。
不思議な夫婦だと思う。
そして、その夫婦が羨ましくて両親のような関係を築ける人が欲しいと願ってた。

