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幸せの頂点
第16章 決意

百貨店の前で母と別れて父が待つ家に帰った。
その夜も部長からの着信があった。
忘れるって決めたのだから…。
あの人と私はただの上司と部下という立場だと何度も自分に言い聞かせる。
私の幸せは仕事をする事。
母のように仕事で誰かに認めて貰えれば、きっとそれが私の幸せだと納得が出来るはずだ。
これ以上は辛いのに耐えられない。
私の事をそっとしておいて欲しい。
そんな風に私から部長を遠ざける。
いつものように出勤していつものように仕事をする日が続いた。
週末の夕方に
「紫乃…。」
と私に声を掛けて来る人が居た。
「克…。」
土曜日だったから多分休みだったのだろう。
「仕事は何時に終わる?」
克にそう聞かれるのが不思議な気がする。
まるでナンパみたい。
克には似合わない。
「遅番だったから、閉店後よ。」
「なら、その後で食事にでも行かないか?」
「行かない。」
「紫乃、もう一度、ちゃんと話し合った方がいい。」
何を話し合うの?
何の為に?
克の為…。
自分好みの都合の良い女が必要だから…。
「仕事中なので失礼致します。」
克に対しお客様に頭を下げるようにしてバックヤードへ逃げ込んだ。
逃げたはずなのに…。
「やっと見つけた。」
そんな野太い声が私の背後の頭上から聞こえる。
振り返れば人という肉壁が立ってる。
「部長っ!?」
「ちょっと来いっ!」
やたらと不機嫌な声。
大きな手が私の腕を掴みバックヤードの隅へとあっという間に追いやる。
「何なんですかっ!?」
「うるせえよ…。」
何故か部長が泣きそうな顔で私を抱き締めて来る。

